いちばんすきな花 目次
- 学生時代の孤独とは?
- 紅葉の懺悔
- 懺悔の真実
──────────────────────── - 1話:美人と友達は無理がある!いい人は残酷だ!
- 3話:椿と純恋の関係は複雑な男女関係の縮図
- 4話:今田美桜はリスのような小動物系の可愛いさ!
- 6話:椿とゆくえに激しく突っかかる赤田の嫉妬心!
学生時代における孤独は地獄にも等しい!
これは学校という閉ざされた環境下にあることもその一因で、内向的な性格の人間には耐えがたい辛さでしょう。
その時の辛い思いが紅葉を後味の悪い行動に駆り立ててしまうことになります。
さて『いちばんすきな花』5話では神尾楓珠が演じる佐藤紅葉がフォーカスされました。
2つ前が椿で先週が夜々、そして週は紅葉で、週毎にこの4人が一人ずつ取り上げられる構成はいいですね。
今回実は私の好きな夜々にするつもりだったのですが、今週紅葉を襲った出来事に感銘を受けたので、紅葉を取り上げることにしました。
巷の口コミでも私と同じような評価や意見が数多く見受けられ、私も遥か昔の学生時代を思い起こし、紅葉の気持ちになってこの5話を深堀りしてみることにしました。
もっとも私が紅葉と同じ経験をしたわけではないのですが、もし自分がそうだったらと感じたことは幾度もあったことを今でも覚えています。
前回の『いちばんすきな花』の感想をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ
日本では、小学6年間、中学3年間が義務教育期間で、その次が人や環境によって分かれますが、大勢を占めているのは高校3年間、そして大学4年間というのが一般的でしょう。
そしてこの学生時代において、大きなウェイトを占めているのが周囲とのコミュニケーションで、これが苦手な人にとってこの学生時代は本当に辛い期間ではないでしょうか。
それが顕著に表れるのが小・中・高の12年間で、大学生ともなれば、自由度も高くなってそれまでの閉鎖的な環境から解き放されることにより、人とのコミュニケーション能力はそれほど重大な意味を持たなくなりますが、そこにいくまでの12年間は人によって極めて重苦しい期間であることは間違いないでしょう。
しかしそれも大人になって振り返ってみれば、人生90年とした場合の12年間など、ほんの一瞬のことでその時に苦しんだことが馬鹿らしく思えるものですが、それは後になってこそ言えることであり、その直面している時期にはとうていそんな思いになれません。
そしてそんな辛い時期に直面していたのが紅葉で、紅葉は周囲からは誰からも慕われて優しい人気者とされていましたが、実際は仲間からは単に便利屋として扱われていたにすぎず、紅葉には真の友達と呼べる仲間がいない孤独感で悩んでいました。
しかし紅葉はそんな自分を隠し、自分と同じく孤独で悩んでいる篠宮に対し優しく振る舞い、おまけにその篠宮に黒崎という友人まで紹介してあげたのでした。
この紅葉の振る舞いに篠宮が感激したのは言うまでもありません。
クラスで大勢に囲まれて生き生きとしている人気者の紅葉が、誰もが見向きもしない自分に声をかけてくれ、しかも友達まで紹介してくれたのですから彼にとって紅葉はナイトのような憧れの存在だったことでしょう。
しかし紅葉は篠宮が描いていたようなナイトではありませんでした。
「篠宮は自分と同じあぶれ者だし、篠宮がいれば自分だけ一人にならなくてすむ」といった下心でもって篠宮に近づいていたのでした。
ところが各々が社会に踏み出してからはお互いの立場は大きく変化します。
紅葉はいつまで経っても自分のイラストを認めてもらえず、バイト先の後輩に馬鹿にされるバイト生活でしたが、篠宮は画家として成功しており、その篠宮からある時アートでコラボの誘いを受けます。
そして二人が再会した時、篠宮は学生時代に優しくされたことへの感謝と、紅葉は憧れの存在であったこと告げ、今もそれは変らず、そんな紅葉と一緒に仕事がしたいと持ちかけられます。
ここで紅葉は言う必要のない、いや言うべきではなかった自分の本当の黒い本心を打ち明けます。
自分が優しさから篠宮に近づいたのではなかったこと。
自分はナイトなんかではなく、本当は篠宮と同類の存在であったことを懺悔したのです。
しかし篠宮にすればそれは絶対に聞きたくなかったことでした。
篠宮は社会に出て画家で成功してからもなお紅葉のことを偶像化していたからです。その偶像がその瞬間に崩れ去り、紅葉が帰ったあと彼は描きかけの絵に、かつて紅葉と向かい合って座ったシーソーの色であった黄色でその絵を塗りつぶしてしまいます。
紅葉はなぜ篠宮に懺悔したのか?
それは紅葉の色んな思惑が錯綜した複雑な思いがあってのことでした。
その一つはこれまでずっと本心を隠してきたことへの罪悪感もあったと思います。
しかしだからとそれを暴露することで自分はすっきりとしたかもしれませんが、それを打ち明けられた側にすればそれが真実であったとしても聞きたくはなかったでしょう。
もしかして篠宮はその真実を既に知っていたのかもしれません。
しかし仮に知っていたとしてもそれを本人の口からは聞きたくなかったと思います。
人間には、ある秘めた黒い真実をお互いが知っていても、それを決して口に出さない美学が存在し、それを口に出した瞬間にその美学は崩れ去り、二人には深い溝が出現することになります。
紅葉は自分の本心を明かすことで篠宮が落胆することを十分すぎるほど分っていたのではないかと思います。
分かっていながら、というよりそれどころか落胆させることを狙っての懺悔であったのかもしれません。
その理由は嫉妬です。
自分は未だに売れないイラストレーターでバイトで食いつないでいる有様。片や画家で成功しているプロの画家。
学生時代に同類と思っていた人間に完全に置いて行かれてしまったことへの嫉妬。
それに加えて、自分には未だに心の通った友人が存在しないのに、篠宮は自分が紹介してやった黒崎と今でも堅い友情でつながっており、それと比較してこの上なく自分がみじめになり、篠宮が自分に対して抱いている偶像を壊してしまいたくなったのではないかと思います。
ところがそれを暴露したことで益々自分が嫌になり、また椿の家に転がり込み、椿に慰めてもらうというのが5話のストーリーでした。
これは多分に私の推測が入っているので、ドラマ制作者の意図と合っているのかどうかは分かりませんが、あくまで私の感想として述べさせていただきました。
考えてみれば人間の心理というのは実にやっかいなものですね。
それでは今回はこのくらいにしておきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
『いちばんすきな花』次の感想・評価をご覧になりたい方はこちらからどうぞ
コメント